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教員名 : 清水 博幸
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授業コード
510371
オムニバス
科目名
高電圧・放電工学
科目名(英語)
High-Voltage and ElectricDischarge Engineering
配当学年
3年
単位数
2単位
年度学期
2025年度春学期
曜日時限
木曜2限
対象学科
基_電電,基_電情
コース
科目区分
専門科目
必選の別
選択科目
担当者
清水 博幸
教室
5-104
実務家教員担当授業
授業の目的と進め方
強電・弱電を問わずあらゆる電気回路や機器・装置でその信頼性の根拠となる電気絶縁の工学的意義を理解する。そのために授業では、まず、高電圧・大電流の扱い方について、安全工学的観点をも含めて技術的な事項を学ぶ。その上で、高電圧・大電流工学の基礎である絶縁破壊・放電に関する知識を電離気体運動論の観点から体系的に学ぶ。それらを踏まえて、種々の形式の放電現象や絶縁破壊現象の機構について理解を深める。
達成目標1
電気機器・設備の機能や動作信頼性における電気絶縁の工学的意義を自分の言葉で説明できること【10%】
達成目標2
気体放電の基礎過程について、原子・電子・イオン等の挙動と現象を電界強度との関係で説明できること【20%】
達成目標3
気体の絶縁破壊機構と各種形式の気体放電現象の特性と特徴を説明できること【20%】
達成目標4
気体・液体・固体の複合絶縁における絶縁破壊現象とその機構について説明できること【20%】
達成目標5
各種の放電が、絶縁材料や機器・設備の劣化等に及ぼす影響について説明できること【10%】
達成目標6
高電圧・大電流の発生方法・測定法の概要を説明できること【10%】
達成目標7
電気機器・設備等に対する高電圧試験の目的と方法を説明できること【10%】
アクティブラーニング
ディスカッション
ディベート
グループワーク
プレゼンテーション
実習
フィールドワーク
その他課題解決型学習
授業計画
授業時間外課題(予習および復習を含む)
第1回
電気・電子工学における「高電圧・放電工学」の位置付け
予習:(1) 電気回路や装置の機能や動作信頼性における電気絶縁の意義について考えてみること。
予習:(2)「 電気磁気学」で学んだ、“電位”・“電圧”・“電界”の定義と、それらの物理的意味、および空間の電位分布から各点の電界を求める方法を再確認しておくこと。 (2時間) 復習:予習で考えた“電気絶縁の意義”に加えて、“絶縁破壊の意義”(放電の発生)について再確認しておくこと。 (2時間) 第2回
(1) 電位・電界の理解
(2) 絶縁破壊・放電現象の基礎過程(その1):気体、液体、固体の性質 予習:(1) 中性原子の構造模型(原子核と核外電子の配置と最外殻電子のエネルギー状態、等)を確認しておくこと。
予習:(2) 「電気回路」や「電気磁気学」で学んだ、電圧、電位、電界、電荷について確認しておくこと。 (2時間) 復習:物質中にある原子や分子の大きさや密度によって、荷電粒子の運動の様子が変わってくることを整理・確認しておくこと。 (2時間) 第3回
絶縁破壊・放電現象の基礎過程(その2):電子と粒子の衝突、励起と電離、電子付着、再結合
予習:気体原子(分子)の絶対温度と熱運動エネルギー、熱運動速度などの関係について確認しておくこと。
(2時間) 復習: 電界中で電子とイオンの移動度が大幅に異なる理由、それを踏まえて、中性原子に対するイオンによる衝突電離は、電子によるそれに比べて無視できる程に小さいことを説明できるよう整理・確認しておくこと。 (3時間) 第4回
気体放電の開始理論:タウンゼントの理論、ストリーマ理論、パッシェンの法則
予習:気体中における粒子の衝突、電離機構、電子の付着現象について整理・確認しておくこと。
(2時間) 復習:気体放電の開始現象を整理し、説明できるようにすること。 (2時間) 第5回
電極形状と放電特性:平等電界と不平等電界、放電の伸展形態
部分放電:部分放電の形態、部分放電の性質 予習:「電気磁気学」で学んだ知識を基に、種々の電極間の電界分の特徴を調べておくこと(平等電界分布、不平等電界分布)。
(2時間) 復習:部分放電は不平等電界電極(不平等電界分布をもたらす電極)で発生する放電形態であるが、その理由を説明できるよう整理・確認しておくこと(最弱点部で絶縁破壊が生じる)。 (2時間) 第6回
気体の自続放電特性:グロー放電、アーク放電
予習: 非自続放電領域は“電圧主導の現象”で、自続放電領域は“電流主導の現象”であるといわれる意味を確認しておくこと。
(2時間) 復習:“非自続放電(未だ絶縁状態が維持されている状態)”と絶縁破壊後の“自続放電”の区別とその工学的意味を整理・確認しておくこと。 (2時間) 第7回
液体・固体の絶縁破壊
予習:液体絶縁物または固体絶縁物の表面が大気中に露出した状態で電圧が加えられた場合、電極や絶縁物表面近傍での電界分布状況を予想し、放電はどの部分で発生するか考えておくこと。
(2時間) 復習:液体・固体絶縁物は、それぞれの分子・原子構造と導電機構の差異により、それぞれ固有の絶縁破壊強度は大きく異なる。その概要を整理・理解しておくこと。 (2時間) 第8回
気体・液体・固体の複合絶縁の絶縁破壊
予習:「電気電子材料」で学んだ、液体または固体絶縁物の電気伝導現象・機構について、その特性や特徴を気体のそれと比較して確認しておくこと。
(2時間) 復習:異種の絶縁物界面における“沿面放電”による絶縁破壊、液体絶縁物中の“火花橋絡放電による絶縁破壊”、および固体絶縁物内部を“貫通する絶縁破壊”の三つの破壊形態が絶縁系に及ぼす影響とその特徴を整理・理解しておくこと。 (2時間) 第9回
高電圧・大電流の発生法(直流電圧、交流電圧、インパルス電圧、インパルス電流)
予習:「電気回路」などで学んだ過渡現象の内容を整理しておくこと。
(2時間) 復習: インパルス電圧発生用の基本回路、発生回路の素子の値と発生する波形の波形パラメータ(波高値・波頭長・波尾長)との関係を調べること。 (3時間) 第10回
高電圧・大電流の測定法(直流電圧、交流電圧、インパルス電圧、インパルス電流)
予習:高電圧値の直接測定法として、標準気中ギャップ(球電極ギャップ、棒-棒電極ギャップ)の大気中での火花破壊放電を利用する方法がある。その原理と概要をテキストや参考図書などにより授業受講の前に調査しておくこと。
(2時間) 復習:各種高電圧に用いられる測定方法について、どのような形式のものがあるか、テキストや参考図書などにより、整理しておくこと。 (2時間) 第11回
電気機器の絶縁構成、各種高電圧機器の例
予習:高電圧機器(器具)の最も簡単な例として、送電線絶縁“がいし”がある。がいしの構造とその責務について、テキストや参考図書などにより事前調査しておくこと。
(2時間) 復習:架橋ポリエチレンケーブルにおける“ボイド(空隙)放電”発生の機構とその影響について整理・確認しておくこと。 (2時間) 第12回
高電圧試験法(絶縁耐力試験、絶縁特性試験)
予習:電気機器や設備の絶縁機能を検証する絶縁試験には、その内容と目的により“絶縁耐力試験”と“絶縁特性試験”とに分類される。それぞれにはどのような試験項目があるかをテキストや参考図書などにより事前に調べておくこと。
(2時間) 復習:予習で事前調査した“絶縁耐力試験”と“絶縁特性試験”について、それぞれの工学的意義を説明できるようにしておくこと。 (2時間) 第13回
雷現象と防護
予習:雷雲となる巨大な積乱雲の発生機構と積乱雲の中に電荷が蓄積される機構について、テキストや参考図書その他により事前に調査しておくこと。
(2時間) 復習:(1) 落雷に伴い地上の構造物に高電圧が現れる機構について説明できるよう整理・理解しておくこと。 復習:(2) 架空地線や避雷針による雷遮蔽理論について調査し、その保護範囲の考え方を整理・確認しておくこと。 (3時間) 第14回
高電圧・大電流技術および放電現象の各方面への応用
予習:高電圧技術、大電流技術、放電現象の各方面への応用例を調査し、それぞれの概要をまとめておくこと。
(2時間) 復習:各人が調査してきた事項について、それらの技術が将来さらに発展するため課題やの利点を討論する。 (2時間) 課題等に対するフィードバック
小テストで正答率が低い設問については、授業内で解説の時間を設ける。
評価方法と基準
小テスト30%、期末試験70%で評価し、60点以上をC評価とする。
テキスト
日髙邦彦 『高電圧工学』[第2版] 数理工学社(2022年)[ISBN: 978-4-86481-096-8]
参考図書
(1)適宜、教材プリントを配布する。
(2)鳳 誠三郎 他 電気学会大学講座『電離気体論』電気学会(1969年) [ISBN:4-88686-106-7](絶版であるが、現在、電気学会電子図書館のオンデマンド版として販売)。 (3)宅間董 他 電気学会大学講座『高電圧大電流工学』電気学会(1988年) [ISBN:987-4-88686-209-8] 科目の位置づけ(学習・教育目標との対応)
「電気磁気学」と「電気回路基礎」の発展科目の一つ。強電・弱電を問わず、各種の電気回路、電気機器・装置の信頼性を担保する最も重要な要因の一つである電気絶縁に関して学習する科目。電気材料・物性論、電気機器学系の科目とも関連が深い。高電圧・大電流現象に関連する安全工学的な事項についても学習する。
履修登録前の準備
「電気回路」、「電気磁気学」の各科目を履修していることが望ましい。また、「電気電子材料」の履修または並行受講が望ましい。
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